笹塚・代田橋透析クリニック当院透析の特色

水が特にきれい

透析液中に混入したエンドトキシンと呼ばれる物質が、透析膜を介し血液中に流入します。この物質は透析アミロイド症(手根管症候群、バネ指、破壊性脊髄関節症など)動脈硬化、栄養状態の悪化などを長期の透析の間に次第に引き起こします。当院では、下記の方法で水を徹底的に清浄化(超純粋透析液)しています。

  • 透析液供給システムは、次亜塩素酸ナトリウム活性水(次亜塩素酸ナトリウム、酢酸混合液で低濃度でも強力な消毒力、低濃度のため、配管は錆びにくく痛みにくいため長い期間清潔にたもてます)で透析終了後消毒滞留洗浄します。
  • 機械室内にも空気清浄機を設置しています。
  • 透析液は、各透析監視装置(コンソール)、RO装置などのエンドトキシンカットフィルターできれいにします。
  • 透析液作成用水(RO水)は毎月検査をしています。
  • 透析液は、透析監視装置(コンソール)を毎月水質検査します。現在まですべて、エンドトキシン測定感度以下の超純粋透析液でした。

専門スタッフによる医療

患者様にやさしく親切である事と最新、最良の医療を実現するため努力を欠かさないスタッフ、穿刺等の技能にすぐれ、患者様の容態に常に注意を向けるスタッフによるによるチーム医療を行っております。

患者様の状態、希望を尊重する透析

腎臓が正常に働けば、体内に吸収された物質や体内で生成された不要な物質は適正量腎臓から排泄されます。血液透析では生身の腎臓のような微調整は不可能ですが、可能な限り患者様の病態にあった透析液、透析方法を追求していきます。

オンラインHDF

オンラインHDF仕様コンソール

オンラインHDF

仕様コンソール

 当院は開院より毎月、透析液及び透析用水の水質検査を行ってきました。すべての月で、超純粋透析液(ウルトラピュア)すなわち、オンラインHDFを行っても何ら問題ない水質である事が確認できました。今年(平成24年)の保険改正に合わせ、新たに開発されたオンラインHDF仕様のコンソールを当院は新たに設置しました。(日機装社製DCS-100NX)(オフラインHDFも行っております) 

 オンラインHDFには、透析アミロイド症予防、皮膚掻痒症や下肢の置き場のないイライラ感、食欲、不眠、貧血などの改善、透析中の血圧安定、ひいては寿命の延長も期待できます。

 

【HD(HemoDialysis=血液透析)・HDF(HemoDialysisFiltration=血液透析濾過)とは】

 つまりHDでは血液中の不要な物質等が、透析器(Dialyser)に開いた小さな穴を血液中から透析液中に移動します。物質は水のなかで無秩序に動き回っていますが、そのスピードは1/√分子量に比例します。すなわち、分子量の小さいものほど動きが速く、そのため、血液から、透析液中に移動する割合が増えます。

  一方HDFは血液透析と濾過を同時に血液透析濾過器(hemodiafilter)で行います。透析に加え濾過も行います。血液から水分を濾し出すので、その分を補充します。濾過膜の穴の大きさ以下の分子量未満のものならば、血液中の水分とほぼ一緒に透析液中に移動します。すなわち、分子量の大小によって血液から透析液へ移動する割合はあまり変わりません。

 つまりHDFはHDでは除去効率が悪い分子量10000を超える物質もかなり除去できます。つまり、透析アミロイド症(手根管症候群や破壊性脊椎関節症)の原因物質であるβ2ミクログロブリン等の諸物質がより多く除去できます。また、不均衡症候群が発生しにくいメリットもあります。

  HDFでは予め200ml/分前後の透析液を血液回路に入れ(前希釈と言います)、その分を余分に濾過するオンラインHDF と濾過の結果不足する電解質溶液を50~70ml/分前後血液回路に補充する(後希釈と言います)オフラインHDFが通常よく行われています。オンラインHDF はオフラインHDFに比べ上記症状の改善効果を強くできるのがメリットです。その一方で、水質管理をより厳重にする必要もあります。

  長時間透析と異なり、食事の制限が緩くなるわけではありません。また心不全の方には長時間透析の方がよいかもしれません。しかし、患者様の自由にできる時間をさらに少なくすることなく、透析の質、患者様の生活のレベルを改善できればウレシイ事です。

 

無酢酸透析(カーボスター、AFBF)

個人用透析機

個人用透析器

(AFBF・オフラインHDF等

多様な透析に対応可能です)

 無酢酸透析では透析液中の酢酸による心臓機能の抑制や血管の拡張がなくなるため、透析中の血圧下降、頭痛、吐き気、四肢のつりなどのトラブルから解放される方もおります。また、透析後疲労感軽減、食欲増進、貧血改善がありよかったと言われる方もおります。

 当院転院後、従来の酢酸を含有する透析液から無酢酸透析(カーボスター)に変更し、食欲の改善、透析中の血圧の安定等の見られた患者様もおられます。そのような方には無酢酸透析(カーボスター)を継続しております。また新規に当クリニックで透析を始められる方についても、無酢酸透析が望ましい方には、無酢酸透析(カーボスターもしくはAFBF=アセテートフリーバイオフィルトレーション)を行います。また、患者様より無酢酸透析のご希望があれば尊重いたします。

 

【カーボスターとは】

 カーボスターの透析液カルシウム濃度は3mEqと一種類しかありません。一方従来の酢酸を含有する透析液カルシウム濃度は2.5mEq,2.75mEq,3mEqなどカーボスターより低いものがあります。

透析患者様のリンやカルシウム高値は異所性石灰化をもたらし、寿命を縮める事が指摘されています。 カーボスターよりカルシウム濃度が低い透析液があっている患者様もおられると考えております。

 さらに詳しく知りたいかたはメールもしくは電話でお問い合わせください。

 

長時間透析

長時間透析には寿命が延長するという大きなメリットがありますので、ご希望される方に行っております。具体的な透析時間は、患者様にご説明の上、ご希望に沿って決めていきます。8時間透析は無理でも5~6時間でも意義があると考えています。長時間透析には他にも以下のようなメリットがあります。

1)カリウム、リンの制限が緩やか

析で血管中や細胞外液のカリウムやリンは除去されますが、細胞内にはまだ、過剰なカリウムやリンは残存しがちです。そして、透析終了後も、細胞内→血液中へのカリウムやリン等の移動は持続します。そのため、4時間透析では、透析終了後、カリウムやリンの血中濃度が各々1mEq/L,1mg/dl程度上昇します。透析時間を延長すれば(すなわち長時間透析)、こういったカリウムやリンを除去する事も可能になりますから、食事の制限も緩やかにできます。

時間透析で、カリウムやリンが除去され過ぎになる方も稀にはいますが、透析液を調整する事や、内服薬等で調整します。

ちなみに、平均的な患者様では、透析時間を4→8時間に延長すれば、透析前のリンが7→5mg/dlになる。or炭酸カルシウム3g/dayの内服が不要になる。orリンを一日200mg余分に摂食できる。****といった程度の効果が期待できます。

2)動脈硬化が進行しにくくなる

ンを十分除去できれば、リン酸カルシウムの血管壁への沈着(異所性石灰化)が防止でき、動脈硬化の防止につながります。

3)塩分の制限が緩やか

間は渇きには耐えられないため、塩分を摂取すると、どうしても水分を摂取してしまいます。(0.8gの塩分で100mlの水分摂取につながります)また、4時間の透析では血管内から水分を除去しますが、細胞内→細胞外→血管内へと水分は移動中であり、4時間の透析終了時、血管内は脱水状態でも、まだ細胞内には過剰な水分が残存しています。そして、細胞内→細胞外→血管内の水分移動は透析終了数時間後まで続きます。つまり、透析終了数時間後にはすでに血管内は水分過剰にもなりかねません。

析時間の延長(すなわち長時間透析)で血管内に移動した水分を除去すれば、その分塩分水分が摂取可能になります。ただ、透析患者様は慢性的塩分水分過剰状態とも言えますので、注意は必要です。

4)高血圧が改善

項で述べたとおり、4時間の透析では体内には過剰な水分が残存しかねません。そして次の透析までの間、体重増加に伴いますます、血管内外へ水分が貯留します。

ういう状態では降圧剤すなわち血管拡張剤をいくら使用しても、拡張した血管に血管外の過剰な水分が流入し、血管内圧、すなわち血圧はあまり低下しません。

時間透析で体内の過剰な水分を除去すれば、降圧剤が不要になる場合もあります。少なくとも、血圧のコントロールは容易になります。

5)心不全を起こさない、心不全の悪化を防止

体内の過剰な水分→循環血液量の増加→血圧の上昇→心臓の圧負荷

体内の過剰な水分→循環血液量の増加→全身及び肺から心臓へ戻ってくる血液の増加(容量負荷)→心臓をより働かせるホルモン(ノルアドレナリン)が増加

るいは、透析で短時間に急激に体内の過剰水分を除去すると、細胞内は水分過剰だが、血管内は脱水→血圧低下、心拍出量低下→心臓をより働かせ、血管を収縮させるホルモン(ノルアドレナリン、レニン、アンギオテンシン系)が増加

ういったホルモン類は、全身の酸素需要を心臓に伝え、心臓を働かせる役割を果たすわけですが、それがたび重なると心筋は疲れます。

不全を発生させないためには、心臓の圧負荷、容量負荷を軽減し、上記ホルモン類の過度の分泌を防止する必要がありますが、長時間透析はこの3点において効果があります。

た、心不全状態の方は、軽度の血管内脱水でも、心臓が頑張って心拍出量を確保する事ができないため、心拍出量低下→血圧低下が発生し、体内の過剰な水分を透析で除去しにくくなります。一方、肺から心臓に戻ってくる血液がわずかに増加しただけでも、その血液を心臓が全身に送り出せず、肺うっ血→肺水腫→肺から酸素を取り込めない→全身酸素欠乏状態→心不全のさらなる悪化、緊急透析になりやすくなっています。

時間透析で血管内脱水を発生させずに十分除水しておくことが、肺水腫→さらなる心不全の悪化を予防する事につながります。

6)透析アミロイド症になりにくい

析アミロイドは手首掌側や関節に沈着しやすく、長年透析を継続するうちに、手掌のしびれ、肩関節や腰の痛み等が発生し、夜間不眠になる方もいます。また、脊椎に沈着し、四肢の麻痺等が発生し、手術が必要になる方もいます。

能のよいダイアライザーやオンラインHDFは血液中からアミロイドを除去するのに有効な方法で、その結果透析後のアミロイドの血中濃度は透析前の1/3以下に低下します。そして、以前にくらべ透析アミロイド症の発症までに時間がかかるようにはなってきています。

かしながら、体内に貯留したアミロイドの血管内への濃度勾配による移動が透析終了後も継続します。長時間透析、すなわち透析時間を延長できれば、血管内へ移動してきたアミロイドをも除去でき、関節痛も和らぎます。

7)貧血の改善

長時間透析では貧血が改善します。理由ははっきりしていませんが、鉄の利用障害の改善の可能性があります。そもそも十分透析を行うのであるから、尿毒素による赤血球寿命短縮や造血障害が改善するのであるなら当然かもしれません。

8)感染症に強くなる

透析の方は免疫能が低下し、風邪、結核といった感染症にかかりやすくなっています。長時間透析で尿毒症物質をとりのぞけば感染症に強くなるのも当然かもしれません。

9)皮膚の痒みの軽減

充実した透析設備

高ナトリウム透析可能 全台

コンソール

コンソール

透析と徐水による血液量の減少を緩和します。心不全や糖尿病の方は透析中過度に血圧が低下するため透析終了後も過剰な水分が体内に残存しがちです。そしてその水分が高血圧や心不全の原因になる…という悪循環にもなりかねません。高ナトリウム透析は透析終了後に過剰な水分を残さないために有効な方法です。

血液量モニター機能付 全台

血液量の減少に伴う血圧の低下を未然に防止するため、血液量をモニターし、除水スピードを調整します。

透析間体重増加の多い方、心不全の方、糖尿病の方などでは、透析中、過度の血圧低下が発生しがちですが、それは身体を痛めてしまいます。さりとて、それを防止するために、重めの体重で透析を終了すると、心不全の悪化や肺水腫を招きかねません。

そういった事を発生させないためには、患者様ご自身、塩分や水分の取りすぎに気をつける事が最も大切ではあります。ただ、過度の血圧低下を、無酢酸透析や高ナトリウム透析で発生しにくくし、また、血液量モニターで未然に防止します。すなわち、極力透析終了後に過度な水分が残らないようにし心不全の発生を防ぎたいと思っております。(透析のお亡くなりになる原因No.1は心不全)

再循環測定装置付 全台

透析しきれいになった血液が、再び透析回路に流入する再循環は、透析の効率を低下させます。血液検査では、わかりにくい面があります。再循環の可能性がある方は、この装置で、簡便に再循環率を測定し、早期発見、スピーディーなシャント治療につなげます。

超音波検査(カラードップラー・パルスドップラー付)

  • 心臓
    心臓の機能低下すなわち心不全は患者様の生活の質や寿命に大きな影響を与えます。早めに心不全の原因(虚血性心筋症、弁膜症、高血圧による心筋壁の肥厚、心嚢水貯留など)と重症度を精査し、早めの治療に結びつけるうえで威力を発揮します。 また、下大静脈径の測定もドライウエイト設定の参考になります。
  • 腹部
    透析のかたは正常の方よりはるかに腎癌になりやすい事が知られています。超音波で、腎癌の可能性あれば、CT,造影CT等を連携病院に依頼します。
  • シャント
    効率よい透析を行うに十分なシャント血流がない場合や前述の再循環率測定装置で異常が発見された場合など、その当日にでも超音波検査を行い、シャント血流量、シャント血管径を測定します。また、心不全の原因がシャント血流過多の可能性である時も検査します。結果によっては、シャントの専門医の先生に治療を依頼しています。
  • 頸動脈
    脳梗塞の危険度を評価するため、定期的に行います。
  • 副甲状腺
    副甲状腺機能亢進症が、内科的治療では良好なコントロールができなくなった時行います。

超音波検査装置

 

超音波検査装置

(ベッドサイドでも使用可能な

上位機種です)

その他の設備

レントゲン(CRシステム)、AED、心電計(12誘導及び4チャンネル呼吸心拍監視装置)、エンドトキシン測定装置、血液ガス電解質Ht測定装置、身障者用トイレ

AED

AED

エンドトキシン測定装置

エンドトキシン測定装置

血液ガス電解質Ht測定装置

血液ガス電解質

Ht測定装置

呼吸心拍監視装置

呼吸心拍監視装置

透析と心不全

身の臓器の酸素(血流)のニーズに心臓が応じきれない状態を心不全といいます。透析の方の死亡原因のナンバー1で25-30%をしめています。心不全の原因には、高血圧、虚血性心疾患などがあります。透析の患者様の場合、透析導入前から、上記疾患に罹患している事が多い事も事実ですが、

  1. 透析前は、体重増加があるため、血液量が増加します。そのため、血圧が上昇しやすい。また、心臓に戻ってくる血液量の増加が心臓の負担になる。
  2. 貧血があるため、心臓の負担が増加する。(貧血を腎機能正常な人のレベルまで改善すると脳梗塞が増え、かえって寿命が縮みます。)
  3. シャントに行く血流の分心臓の仕事が増加する。

などの理由もあるため、心不全になりやすいと考えられています。

ったん心不全になると、全身の臓器血流を維持するためのシステム(レニン、アンギオテンシン、アルドステロン系や交感神経系)が働きますが、それがかえって心臓のオーバーワークにつながり、心臓が「疲れ切った」状態になり、心不全がかえって悪化します。また、そういったシステムが働かないようにする薬により、患者様が長生きできる事は透析患者様の場合も含め、証明されています。

だ、心臓が、疲れ切った状態にしない薬は、とりあえず、心臓を休ませるため、心臓からの送りだされる血液の量が減少します。その結果、血圧が下降しすぎ、投与できなくなる事もあります。特に、透析の患者様は、透析中、除水と血液等細胞外液から細胞内への水分移動のため、血管内脱水になるため、透析後半に血圧が下降しやすくなります。そのため、投与する上で工夫が必要になる事があります。

※血圧上昇(防止には、降圧剤***しかし、過剰な水分が大量になればなるほど降圧効果は弱くなる)

※前負荷(心臓に戻る血液が増加すると心臓の負担になる)

その時は透析で急激にシャントから水分を除去する必要性が発生しますが、体内の過剰な水分が血管内に移動するスピードが、シャントから除去する水分量に追いつかない現象が発生します。すなわち、体内はまだ水分過剰であるにかかわらず、血管内脱水(血液量の減少)発生し、血圧が低下します。結局慢性的な体内の水分過剰状態に陥り心不全が発生します。

その対策としては、

  1. 患者様自身が、塩分、水分の摂取を抑える→透析間体重増加が減少(中2日でドライウエイトの6%以内)
  2. 虚血性心疾患(心臓の血管の動脈硬化)を防止する。そのためには、血圧を適正にコントロールする。(具体的な値は、患者様の状態により変わります。)リン、コレステロール等の低下薬を忘れずに内服する。リンやコレステロールを食べ過ぎない。
  3. 患者様自身の尿は次第に減少しますが、減少するペースを緩やかにするよう努める。具体的には、
    A. 透析終了時に過度の血管内脱水としない。(そのためには、透析間の体重増加が少ない方がよい)
    B. 腎臓の血管の動脈硬化防止
    C. 感染(感冒など)に罹患しない
    D. 適切な赤血球濃度の維持(過度の貧血は腎臓にダメージとなります)
    E. 腎保護作用のある降圧剤を適切に内服する
  4. 長時間透析をして極力体内の過剰な水分を除去する

などの方法があります。

析中は血管内脱水に対し、心臓は、血圧を低下しないように頑張って心拍出量を維持しようと頑張ります。しかし、心不全で、心臓に頑張る余力がないと、血圧の低下が発生しやすくなり、そのため、限られた時間内に除水できる量が減少します。つまり、一旦心不全が発生してしまうと、慢性的な体内の水分過剰にますますなりやすくなり、心不全が悪化しかねません。

のために、心不全の患者様は、特に、塩分水分を少なめに摂取するよう気をつけていただきたいと思ってますが、さりとて、それにも限界があるため、当クリニックの透析では、

  1. 高ナトリウム透析を行う
  2. 長時間透析を行い、一回で除去できる水分量を増やす。
    • 透析にて、血液中の有害あるいは不要な物質は除去されます。すると、そういった物質は細胞内から血液などの細胞外に直ちに移動するわけではないので、細胞内外に濃度差が発生します。すると細胞内外の濃度差がなくなるよう細胞外の水分は、細胞内に移動する現象(実際は、血管内等の細胞外液の脱水を補うための細胞内→細胞外の水分移動に拮抗する現象になる事が多いのですが、話を簡略化しています)が発生します。すると、血液等の細胞外液が減少し、血圧は低下しやすくなります。その現象を防止するため、透析液のナトリウム濃度を濃くする方法があります。
    • ただ、この方法は体内に塩化ナトリウムが流入するため、透析の後半には中止し、血液中のナトリウム濃度を下げる必要があります。すると、血液を含む細胞外液の浸透圧が低下し、それは、細胞外→内方向への水分移動をもたらします。それでは、透析前半は細胞内→外方向への水分移動が増加していても後半は大きくスピードダ ウンするので、結局全体としての水分移動量は同じになるのではないか?という疑問がわきます。
    • ただ、結論的にはそうなりません。その理由は、細胞内⇔外の水分移動の際、水に溶けている物質も数十%は細胞内⇔外に移動します。(ナトリウムは細胞外→内に移動しますが、ナトリウムを細胞内→外に移動させるシステム(Na K ATPase)で細胞外に汲みだされます)すると、細胞内or外に移動した物質の浸透圧により、さらに水分の細胞内or外の移動が発生します。
    • 透析前半の高ナトリウム透析は、細胞外液の浸透圧を高め、細胞内の水分を細胞外に移動させますが、その結果、水に溶解している細胞内諸物質の数十%も細胞外に移動し、その浸透圧効果で、さらなる水(と水に溶解している諸物質)の移動を引き起こします。透析後半高ナトリウム透析を中止すると、細胞内→外の水分移動は、高ナトリウム透析を行わなかった時以上にスピードダウンしますが、そういった諸物質の細胞内濃度が低下しているためそういった現象(さらなる水の移動)の程度が軽くなります。つまり、透析前半の高ナトリウム透析は細胞内諸物質をも細胞外へ汲みだします。総計として、透析中の、細胞内→外へ移動する物質と水の量を増加させます。透析を同じ体重で終了したとしても、血液などの細胞外液の量を多くできます。
    • わずかな血液量の減少で血圧低下をきたす、心不全、糖尿病性自律神経障害の方への対策になります。また、除水量が多いため、血管内脱水→血圧低下をきたす方にも効果があります。
  3. 無酢酸透析にすれば、透析液に含まれる(個人差はありますが)酢酸による血管拡張が防げる→血圧低下しにくい。
  4. 透析前半の除水量を増やす。
  5. 透析途中で急激な血圧低下が発生しないようにする。
    • ブラツドボリューム計は、血圧低下が発生するポイントを把握するために便利です。

等の対策をとっています。

また、心不全の進行をペースダウンする薬として、

  1. アーチストなどのベーター阻害薬を内服していただき心臓を休ませる
  2. レニン、アンギオテンシン、アルドステロン系を抑制するACE阻害薬、ARB等を内服していただく。
    • この2群の薬は血圧を低下させる効果もあるため、量が多すぎると透析中必要な除水ができなくなる事もあります。示適量の設定が困難な事もありますし、内服時間に工夫が必要になる事もあります。
  3. ジギタリス製剤 心臓の収縮力を強め、心不全の症状を改善します。飲み過ぎると、不整脈による突然死や吐き気などの症状がでる事もあるので、安全な少なめの量で内服していただくようにしています。交感神経を抑制するメリットもあります。
    • ジギタリスは圧受容体機能を改善し心不全における交感神経を抑制します

透析と食事

リン

ルシウム×リンが高値では、血管壁にリン酸カルシウムが沈着する(異所性石灰化)ため、週初のリンは3.5~6.0 カルシウムも8.4~10.0(血清アルブミン補正後)カルシウム×リン55以下が望ましいとされています。

だ、すでに傷害を受けた血管は、血管の石灰化を防止するシステムも傷害を受けているため、リンが6.0より低値でも石灰化進行します。完全に防止するためにはリンを4.0前後以下にする必要がありますが、ただ、リンが3.5以下になれば、骨から、リン酸カルシウムが抜け、骨が弱くなりる人もいます。

ルシウム値は体内に変動を抑えるシステムが存在するため、比較的一定に保たれますが、リンの変動は大きいため、リンの摂取を抑える事が異所性石灰化の防止に一番必要になります。

なみに透析前のリン値は週初5.5 週央と週末5.0と仮定し、1回各4時間の透析を行えば、1週間で合計2600mg前後のリンが透析で除去されます。

方、食事制限で一日リン摂食量を800mgに制限、透析患者様のリンの消化管吸収率は30~80%、平均60%と考えれば、体内に吸収されるリンの量は毎週1680mg~4480mg 、平均3360mgという計算になります。逆算すれば、平均的には一日619mgのリン摂食なら透析で除去できる事になりますが、味や栄養の面でそこまでリンを制限するのは困難です。

(3360-2600)÷7=108.6 一日108.6mgのリンをリン吸着薬で吸収されないようにする必要があります。平均的には、一日、炭酸カルシウム2~3g or塩酸セベラマー(フォスブロック、レナジェル)3~5g orランタン(ホスレノール)1000mg前後の内服が必要になります。

だ、そもそも、リンの吸収率には個人差があります。また、胃酸の分泌が少ない人は炭酸カルシウムが溶解しないため、効かなくなります。炭酸カルシウムを毎食1.5g以上に増量しても効果は頭打ちになります。便秘になるため、こういった薬の使用量には限界があります。4時間透析で、透析前リンを5.5~6.0以下に抑えるためには、多くの場合、食事制限とリン吸着薬の併用が必要となります。

お、体内に吸収されたリンは少なめの時は細胞内への分布が多いため、細胞外液である血液中のリンの上昇は緩やかですが、多くなると、細胞内より外への分布が増し、 血液中のリンは急激に上昇します。(別図 1)

  

リンを取りすぎたと思ったら、次の透析までのリンの摂取は特に控えましょう。また、週末、透析間隔が中2日となる時はリン摂取に注意しましょう。

た、透析で除去されるリンは、透析前のリンが高くなるほど増加しますが、リン値に比例する程ではありません。(図2)リンの過剰摂取は、加速度的に高リン血症と異所性石灰化をもたらすと思われます。

カリウム

 

食事中のカリウムは平均50~60%体内に吸収されますが、これも個人差があるため、許容される一日カリウム摂取量は1.5g~制限不必要まで千差万別ですが、2~2.5gの方が多いようです。高カリウム血症による心停止→突然死は有名です。カリウム8mEq/L以上で心停止の可能性がでます。急激にカリウムが上昇した時は低め(8mEq/L前後)のカリウム値でも心停止となります。

た、カリウム7mEq/L以上では致死的な不整脈を発生する可能性が、ないとは言えません。

から吸収されたカリウムは、まず血液中など細胞外液に流入しますが、その後大部分は細胞内に移動します。ただ、血液中カリウムが高値の時は、すでに細胞内もカリウムでいっぱいとなっており、細胞外→内に移動するカリウムの割合は減少します。すなわち、高カリウム血症になればなるほど、少しカリウムを食べただけですぐカリウムは上昇します。体内のカリウム総量と血液中カリウムは(図3)のような関係になります。

カリウム6mEq/Lで心停止になるわけではありませんが、さらに余分に摂食すれば、心停止する危険がでてきます。カリウム6.2~6.4mEq/L以上にならないよう気をつけましょう。また、心臓の筋肉が動かなくなる前に他の筋肉も動かなくなります。すなわち、膝がこける。コップを落とすなど筋肉に力が入らなくなります。呼吸筋が動かなくなってくるため息苦しくなる事もあります。そういう時は、カリウムをほとんど含まないパンや米飯を食べ、すぐに医師に連絡しましょう。カリウムを除くために緊急透析が必要かもしれません。

た、カリウム2.5mEq/L以下では突然死に移行する危険のある不整脈(torsades de pointes)の発生の危険が増加します。透析終了時のカリウムは2.5mEq/L以上にしておきたいものです。

透析と血圧

透析の方の最高血圧は透析開始時で150以下にコントロールしたい、肉体年齢70歳以下の若い方は140以下、50歳以下なら130以下をめざしたいと考えています。ただ、急いで血圧を目標値まで下げようとすると、透析中〜後の血圧が不安定になったり、脳や心臓等の内臓の血流不足を思わせる症状(全身倦怠感、立ちくらみ、胸痛、腹痛など)が出現する場合も多いため、時間をかけて血圧の低下を図る事もありますし、より高めの血圧に目標を修正せざるを得ない事もあります。

透析中はほとんどの方が除水に伴い血圧が低下します。過度の血圧低下をきたさないようするため、必要に応じ以下のような工夫等を行っています。

  1. 透析後半には降圧剤の効果が減弱するような工夫をする。
  2. 血液量減少モニター機能を利用し、透析中の急激な血圧を未然に防止
  3. 高ナトリウム透析(一部の方)
  4. 無酢酸透析(一部の方に有効)
  5. 血圧低下を防止する薬

透析で血管から水分を取り除けば血管内脱水が発生します。通常は血管を収縮させるホルモンや心臓をさらに働かせるホルモンが分泌され、血圧の下降を防止します。糖尿病の方や高齢の方、長い透析歴の方にはこのホルモンの分泌が十分でない方がかなりおられます。そのような方にはホルモンの代役となる薬を内服していただく事もあります。

 

無料サービス

送迎車による無料送迎(人工透析の方)

送迎車による無料送迎を行っております。

 

 

  • その他通院上の御要望があれば、御相談ください。

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全ベッドに設置しており無料でご覧になれます。

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